第3章「イメージによる記憶術入門」 A.イメージを描く練習をしてみよう 第3章 イメージによる記憶術入門
再び覚くんの登場 (この章の解説は、序章で登場した覚くんが祖父にレッスンを受けるという形で展開します) ![]() 登場人物覚(さとる) 高校1年生 祖父 元記憶術インストラクター A.イメージを描く練習をしてみよう1.具象的な単語のイメージ化 覚 今日からおじいちゃんに記憶術の弟子入りすることにしたので、よろしくお願いします。 祖父 親しき仲にも礼儀あり。覚にしてはなかなか見上げた態度じゃ。それではさっそく始めてみるとしよう。最初は記憶術の最も基本となるイメージを描く練習だ。 まず手始めに、お母さんの顔を思い出してごらん。 覚 えっ、そんな簡単なことから始めるの? もうあの顔を思い浮かべるのは飽きちゃったんだけど。 祖父 物事には順序というものがあるんだ。ではカボチャはどうだ。 覚 これも一発だね。面倒だからまとめて言ってくれる? 祖父 よし、それなら10個ばかり単語を言うぞ。 (祖父、メモ用紙を取り出してゆっくり読み上げる) 例題1 次の単語をおよそ3秒間隔で順番に頭に描いてください。
覚 3秒あれば楽勝だね。あ、でも少し気になったことがあるんだけど…。たとえば、テレビとかベッドって言われると、自分の部屋にあるものを連想しちゃうけど、いいの? 祖父 もちろん。むしろその方がいいくらいだ。抽象的なテレビという存在よりも、いつも見てるテレビのほうが生活感情が入る分、イメージが強固だからね。 それよりも犬は何を連想した? 近頃はやりのミニチュアダックスフントかな。 覚 ボクはああいう猫みたいな犬は好みじゃないんだ。でも何犬かと聞かれると困るなあ。なんとなく柴犬に似ていた感じもするけど。何を思い浮かべればよかったの? 祖父 記憶術に正解なんてないよ。犬にはいろいろな種類があるけど、最初に浮かんだ犬の形がその人にとっての正解だ。もちろん、家で犬を飼っている人なら、その犬を思い浮かべたほうが感情のきずなが強い分、イメージが強いことになる。 覚 そうなんだ。じゃ、たとえば魚だったらタイやヒラメでも、メダカとかサメでもいいの? 祖父 そう、最初にイメージが思い浮かんだのならかまわないさ。でも、小学校の図画の時間に「魚の絵を描いてください」と言われて、メダカやサメを選ぶ子はめったにいないだろう。サメが魚の代表選手だと思う人は、将来がちょっくら心配だな。 覚 ボ、ボクはサメが魚の代表だなんて思っていないよ。ただ、皮肉屋のおじいちゃんの血を受け継いでいるから、ちょっと言ってみただけさ。 祖父 ますます心配だ。
2.集合的名詞のイメージ化 祖父 犬や魚の例が出たのでちょうどいい。今度は集合的な概念を持った具象的名詞をやってみよう。 覚 急にややこしいことを言い出したなあ。 祖父 別に難しいことなんかないぞ。たとえば「楽器」という名詞は、ピアノやギター、トランペット、バイオリン、ドラム、マリンバ、三味線などの総称だろう。それぞれは具象的だが、全体としては抽象的な概念ともいえる。 覚 そうか、魚にもいろいろあるように、楽器もいろいろ…。 祖父 人生いろいろー♪ 覚 ちょ、ちょっと! わかった。おじいちゃんの楽器の代表選手は三味線だったんだ。 祖父 いや、三味線は三味線だ。楽器で真っ先に浮かぶのはテナーサックスだな。 覚 ボクはギターだね。おじいちゃんの時代にはエレキと呼んだんでしょ?。 祖父 まあ、そんなことはどうでもいい。問題に移ろう。これもやはり1単語につき3秒以内で、頭にイメージを描くトレーニングだ。 例題2 次の集合的名詞を代表する具体的なイメージを描いてください。
覚 う〜ん。草花にはちょっと時間がかかっちゃった。コスモスにしようか、それとも、え〜とあれは何の花だっけ、なんて迷っちゃって…。 祖父 別に花の名前などはどうでもいいんだよ。頭に絵が浮かんでそれが草花って感じることが大事だ。それと、記憶術ではイメージ作りにあれこれ迷うのはあまりよくない。あとで印象に残らないことが多いからだ。 覚 一つ質問だけど、家具から家具売り場を連想するのはありなの? 祖父 その家具売り場が自分の知っている具体的な場所なら大いにけっこう。でも実在しない想像上の家具売り場だと、少し弱いかもしれないな。それよりは和ダンス、ベッド、食器棚、応接セットなど大きなものを一つ選んで、頭に「家具」と言い聞かせるほうが、他のものとイメージ連結したときに強く記憶に残るはずだ。 覚 家具を食器棚なんかにしたとき、あとで家具なのか食器棚なのかわからなくはならないの? 祖父 その心配はほとんどないな。たとえわからなくなっても、どちらだったかは常識で判断できるはずだ。 覚 そうか。今日は疲れたからこの辺でやめておこう。 祖父 おいおい、それはわしの台詞(せりふ)じゃ。
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