序章「新・記憶術のすすめ」
序章 新・記憶術のススメ1.記憶術とは何か?![]() 登場人物覚(さとる) 高校1年生 祖父 元記憶術インストラクター 覚 おじいちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…。 祖父 おう、何でも聞いてくれ。彼女の話か? 覚 そんなんじゃないよ。おじいちゃん、記憶術ができるっていってたよね。 祖父 おっ、覚もとうとう記憶術が必要な歳になったか。 覚 必要かどうかわからないから聞いてるんじゃない。記憶術ってどんなことができて、どれだけ効果があるの? 祖父 そりゃ、一度にたくさん覚えられて、試験にとても効果がある技術じゃよ。 覚 何で急に日本昔話の口調になるの? それに全然、答えになってないじゃない。 祖父 もっと聞きたいのなら、くわしく教えてやってもいいぞ(内心うれしくて仕方がない)。記憶術を使うと、たとえば文学史などというものがあるだろう。清少納言が枕草子を書いたとか、紀貫之がどうしたこうしたとか、あんなものは1日で全部覚えられてしまうんだ。しかも、一度本を閉じて復唱すれば、もうめったなことでは忘れないというスグレモノだ。 覚 スグレモノねえ。でもどうして記憶術を使うとそんなことができるの? 祖父 う〜む、それを一言でいうのは難しいが、あえていうならば、言葉をイメージに変えて頭に焼き付けるからじゃよ。 覚 一言でいえてるじゃない。それに「〜じゃよ」はやめてくれない? 祖父 一種の照れ隠しじゃ。 覚 さっそくだけど、記憶術のやり方を具体的に教えてよ。 祖父 そうだなあ。たとえば、樋口一葉の代表作を知ってるか? 覚 え〜と、どこかで聞いたことがあるんだけど……。細雪? 祖父 それは谷崎潤一郎だ。急に声が小さくなってきたぞ。樋口一葉は「たけくらべ」。知らないのならちょうどよい。これを記憶術ではどう覚えるかだが、まず樋口一葉を頭に思い浮かべる。 覚 そんな昔の人、顔も知らないし、無理だよ。 祖父 五千円札も見たことがないのか、かわいそうに。 覚 あ、あの古風なお姉さんのことか。でも、やっぱり顔は覚えてないな。 祖父 覚えてなくてもけっこう。 「樋口一葉が五千円札の中から飛び出した」 とイメージするんだ。そして、一葉が覚の横に並んで「たけくらべ」をする場面を想像してごらん。
祖父 覚にしてはなかなかいいことに気づいたな。記憶術は実はSFやマンガのように覚えてしまう技術なのだよ。 覚 「覚にしては」は余分だけど、でも、おじいちゃんが人をほめるなんてめったにないからうれしいよ。記憶術って、なんかおもしろそうだね。 祖父 そうだろう? ふつう、興味のない科目は集中できず、覚えるのも面倒くさくなるものだ。だから成績が落ちて、トップとどんどん差がついていく。でも記憶術なら、興味のないことでもおもしろく覚えられるんだ。ふつうだったらややこしくて投げ出したくなることだって、記憶術ならラクラク覚えられる。 覚 そうなったら嫌いな科目も好きになるかもね。 祖父 そう、覚えることが趣味になってしまう恐れがあるな。 覚 覚えることが趣味なんてちょっとキモイな。でも、そうなることにやぶさかではないね。成績がぐ〜んと上がるなら。 祖父 「やぶさか」か。若いのに古風な表現を知ってるな。 覚 おじいちゃんのいつもの口癖を真似てみただけだよ。 覚 それはそうと、記憶術はだれでもできるようになるものなの? 祖父 もちろんさ。ある能力さえ持っていればね。 覚 どんな能力なの? 祖父 見慣れた人の顔が思い浮かべられる能力だ。 覚 な〜んだ。結局、人間ならだれでもできるってことじゃない。 祖父 そういう表現でも正解だ。答えはたくさんある……。 覚 禅問答みたいになるから、その続きはやめようよ。で、だれでもできるといっても、やっぱし記憶術に向いている人とか、あるんじゃないの? 祖父 たいした差はないが、標準より早く身につくタイプの人が存在することを否定するデータを当方は持ち合わせていない。 覚 めっちゃ歯切れが悪くなっちゃったけど、差があるってことね。で、ボクの場合はどうなの? 早く身につくタイプなの? 祖父 あえていうならば、覚のように口ばかり達者でおっちょこちょいの人間は…… 覚 やっぱりダメか。 祖父 せっかちじゃのう。見込みがあるといいたかったのに。 覚 ホント? やったー。でもどうして? 祖父 まず、口の達者な人はイメージ豊かである可能性がある。それにおっちょこちょいは、良くいえば頭の回転が速いということだ。それが現在は勉強とうまくかみ合っていない。記憶術ならそれが生かせるというわけだ。 覚 すごい! おじいちゃんって昔、セールスマンだったの? ボク、すっかり記憶術をやる気になっちゃったよ。 祖父 最後に付け加えると、記憶術は脳の使い方をちょっとだけ変えて覚える技術だということだ。 それではここで読者のために、どんなタイプの人が記憶術に特に向いているかのチェックシートを用意したので、遊び半分でやっていただきましょう。 覚 ボクもやろうっと。 トップへ 2.記憶の達人になれる人はこんな人記憶術はだれでもできます。記憶術を、体を使うものにたとえていえば、自転車や水泳のようなものです。正しい方法で練習すれば、だれでも試験勉強に応用できるレベルになるはずです。 しかし、どんな習いごとにも個人差があります。早く身につく人と、少し時間のかかる人。最初は遅れるけど、あとになってトップグループに躍り出る人。逆に、早く水準に達するけど、その後伸び悩む人。いろいろな人がいることは記憶術も同じです。 そして、いちばん早く上達する人は、切実にそれを望む人、興味を持ち続けて練習をおもしろいと感じる人です。 それをふまえた上で、記憶術がより早く身につくタイプはどんな人か、セルフチェックをしていただきましょう。 答えは「はい=○」「いいえ=×」「どちらともいえない=△」で記入してください。 ■記憶の達人になれる人 チェックリスト 1( )新しいことには積極的にチャレンジしていきたい。 2( )マンガやアニメが大好きである。 3( )機械的な丸暗記には人に負けない自信がある。 4( )旅行や散歩が好きである。 5( )小学生の頃、絵を描くのが大好きだった。 6( )落語や漫才などのお笑いが好きである。 7( )空想にふける癖がある。 8( )切手や写真などを蒐集して整理することが好きである。 9( )物事を決めるのには感覚や感情よりも理性が大事だと思う。 10( )冗談をいい合うのは好きなほうだ。 11( )机の上はきちんと整理すべきで、曲がって置くのは気持ちが悪い。 12( )ダジャレや漢字の当て字はおもしろいと思う。 ※「記憶の達人になれる人」採点と解説はこの写真の下から ![]() ■採点と解説 次の点数によって採点し、合計点を計算してください。 ・1・2・4・5・6・7・8・10・12に○印は各2点。×印は各0点 ・3・9・11に○印は各2点。×印は各0点 ・△印はすべて1点として計算 1( ○ )新しいことには積極的にチャレンジしていきたい。 何ごとにも好奇心を持ち、新しいことにチャレンジしていく姿勢は、記憶術を身につける上でも大きなプラスになります。 2( ○ )マンガやアニメが大好きである。 記憶術はイメージを利用して覚える技術なので、マンガやアニメの好きな人のほうが、発想が豊かである可能性が高く、有利です。 3( × )機械的な丸暗記には人に負けない自信がある。 暗記に自信を持っている人は、記憶術を身につけたいという切実性に欠け、時には記憶術の効果を疑うため、身につくのが遅れる可能性があります。 4( ○ )旅行や散歩が好きである。 基礎結合法という方法は、なじみの風景に覚えるべきことを結びつける方法です。風景に関心の高い人のほうが基礎結合法に関しては有利です。 5( ○ )小学生の頃、絵を描くのが大好きだった。 絵の好きな人は頭にイメージを描くことが得意です。記憶術の方法を自然に受け入れる下地があります。 6( ○ )落語や漫才などのお笑いが好きである。 クソまじめな人よりも、常識を外れたおもしろいことが好きな人のほうが、イメージを描くことに早く習熟します。 7( ○ )空想にふける癖がある。 自由な空想力こそは記憶術で最も大切な資質です。現実にありえないことを想像できることが記憶術上達の条件です。 8( ○ )切手や写真などを蒐集して整理することが好きである。 記憶術は、まず覚えるべきことが整理されていることが大事です。そして、一定の条件・ルールに従って物が増えていく喜びは、記憶術で覚えることに似ています。 9( × )物事を決めるのには感覚や感情よりも理性が大事だと思う。 記憶術の方法には理論的な裏づけがありますが、実際に身につけるのは理屈ではありません。頭をやわらかくして、感覚的・直感的に頭を働かせるほうが有利です。 10( ○ )冗談をいい合うのは好きなほうだ。 冗談は常識から外れることを楽しむこと、そして瞬間的な言葉のインスピレーションを働かせることです。記憶術の覚え方もそれに通じる部分があります。 11( × )机の上はきちんと整理すべきで、曲がって置くのは気持ちが悪い。 あまりに几帳面過ぎる人は、決まったレールを踏み外すことができません。突飛なイメージを連結して覚える記憶術には、最初はてこずるでしょう。 12( ○ )ダジャレや漢字の当て字はおもしろいと思う。 記憶術のテクニックの一部に、ダジャレや漢字の当て字を利用するものがあります。ダジャレのセンスのある人は記憶術ではたいへん有利です。 ■上達のカギは「おもしろい」と思うこと 採点の結果は何点だったでしょうか。次に、点数別の評価を示します。 ・16点以上………記憶術が標準より早く身につき、達人になる可能性が高い。 ・8点〜15点……標準的なペースで記憶術がしっかり身につきます。 ・7点以下 ………イメージを描くのに慣れるまで、少してこずるかもしれません。 上の評価が低い結果になった人でも、不利だと決まったわけではありません。 なぜなら、チェック項目に「記憶術をおもしろいと思う」という最重要項目が抜けているからです。この“ネット書籍”を読み終えたときに、記憶術をおもしろいと思うか、つまらないと思うかで、達人への道が決まるのです。記憶術がおもしろくなると、あなたの眠っていた脳が開かれ、何かが変わってくるはずです。 ことわざにも「好きこそ物の上手なれ」とあります。記憶術という方法を楽しめるかどうかが、「記憶の達人」へのカギとなるでしょう。 チェックリストに戻る トップへ Copywrite: Akira Takayama |